ガラスたちのおしゃべり : 株式会社十條 制作部/スタジオ グラシアムのスタッフブログ

2012年12月7日金曜日

ハーヴァード・グラスフラワー



「ハーヴァード・グラスフラワー」という聞きなれないガラス細工の名をみかけました。

アメリカでは19世紀後半、今日に残る多くの有名な博物館が設立されています。

植物標本というと、当時は押し花しか技術がなく植物本来のみずみずしい生態が

失われることは避けられませんでした。

ハーヴァード大学の植物博物館の初代館長となったグッデイルが科学的に正確で

しかも、いつまでも美しい植物模型はつくれないものかと考え、その制作をドレスデン

に住むガラス細工師ブラシェカ親子にはじめて依頼したのは1886年のことでした。

1889年にグッデイルが作業の手順を描写したものによりますと、ガラス管をひいて

花冠をつくり、これに花弁をつけ、さらにおしべやガクを加えた小さな花を三つ

作るのに二時間半かかりました。それとは別にガラスのひずみをとるために

途中で数時間、除冷の窯でさましながら制作しています。そしてガラスでおおった

針金の先に蕾をつけ、これらをすべて茎に熔着して、最後に必要な個所に着色

を加えます。

このガラス細工でできた精巧な花の標本こそ「ハーヴァード・グラスフラワー」

の総称です。

 材料に対する深い知識、瞬時に思いどうりの形をつくっていく熟練の技と

忍耐力、対象への鋭い観察が結びついてこのように完璧な作品を可能に

したのでした。

はじめの頃つくられた作品のなかには、表面の絵の具がはがれ落ちて下の

ガラスが見えてしまっているものもあります。

そのデリケートさゆえに、1976年にニューヨーク5番街で開かれた展覧会の

さいには、最も揺れが少なく最適ということで霊柩車で送迎され、無事に

生還できたそうです。

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